実は怖い!「お父さんの感情」が家族に及ぼす影響

「お父さんの感情」はこんなに家族に影響する

多くの男性の全般的な傾向として、

・感情が苦手

・感情がよくわからない

ということが挙げられます。

もちろん、ご本人はあまりにも普通すぎてそんな自覚がなく、それで困っているという方もあんまりいません。

 

しかし、そんな男性が家庭を持つとどうなるか?

 

平和であってほしいはずの家族が、なんだかギクシャクして、次第にみんなの気持ちが離れ、何かと問題が起こり

大切だったはずの家族が、いつしかめんどくさいものに変わり、しかしなんでこうなるのかサッパリわからない!

・・・といった「望まない現実」へとつながってしまうのです。

 

脅かすようですが、

お父さんが「感情オンチ」だと
家族みんなが苦しむことになる

という法則が確かにあると、私は感じます。

もちろん、全てが男性/お父さんの責任ではありませんが、今回はあえてお父さんサイドから、家族の問題を紐解いてみましょう。

「感情の領域」が存在しないお父さん

セッションで皆さんのお話を聞いていると

・家の中に存在感のないお父さん

・話が全然通じないお父さん

・妻や子供の気持ちが全くわからないお父さん

・男は稼いでくればいいとだけ思っているお父さん

・威張って押し付けてくるだけのお父さん

・やりきれない気持ちを妻や子供にぶつけるお父さん

などがよく出てきます。

もちろん、子供の立場から見たお父さん像です。

 

そこから浮かび上がってくるのは

こういうお父さんたちには

「感性や感情」という領域が
存在しない

のではないか・・・・?ということ。

 

いえ、本当は存在していても、本人がその存在を認めていないか、見えないところに埋めてぴったりフタしちゃったような感じで、事実上、そこは空白といってもいいでしょう。

だから、意識上は

「感情?べつにない。わからない。」

なのですよね。

 

長年、感情というものに一切フタをして「こうあるべき」に自分を合わせ続け、

「やるべきこと、やらねばならないこと」ばかりに邁進し続けるとそういうことになります。

感性理性のフタ.005

そもそもお父さん自身が自分の気持ちなどに目を向けたことがないから、家族の気持ちに目を向けるという回路がないし、「気持ち」とか言われてもよくわからないのです。

参考記事

 

わかってもらいたいお母さんとのすれ違い

さて、お父さんがそんなだと、家族はどうなるか。

 

まず、お母さんがイライラします。

「話を聞いてくれない。気持ちをわかってくれない。」と怒ったりするでしょう。

女性は基本的に「気持ちをわかってもらいたい生き物」なのです。

 

へえー。それはたいへんだったね。

そんなに辛かったんだね。

寂しい思いをしたんだね。

ああ、それはうれしいねえー。

へえー、よかったねー!

 

などと、感情をただそのまま受け止めてもらえたら「わかってもらえた」と満足するのです。

 

けれど、お父さんは「気持ち」などというものにはチンプンカンプンなので、

「だったらこうすればいいじゃないか。」とか

「そんなグチ言ったってしょうがないだろ。」とか言って一蹴したりするんですよね。

「疲れてるのに、そんな話を聞かされてもめんどくさい。」と感じて相手にしなくなるし

奥さんが「わかってくれない」と言って怒り出すと

「俺はこんなにちゃんとやってるじゃないか。これ以上一体何をしろというんだ!?」

と逆ギレしたくなることもあるでしょう。

 

そんなお父さんが、いざ家族に何かモノを言うときは、

「相手の気持ちを受け止めてやりとり」などという回路はないので、自分がいいと思うことを一方的にバーン!と言うことになったりします。

すると子供たちなんかは「お父さんに決めつけられた!押し付けられた!」と反発したり、

反発する勇気のない子は無言で引きこもったりすることになるでしょう。

 

そうなんです、お父さんには「気持ちをわかる」という回路がない。

「やるべきことをやる」という回路だけを高度に発達させてきたのだから、しょうがないんですね。

 

責めて怒鳴るお父さんの感情は?

一方、すぐ怒って家族を責めたり怒鳴ったりするお父さんは、一見したところ感情が激しいように見えますが、実はちょっと違います。

そういうお父さんは、自分の本当の気持ちを感じたくないのです。

その怒りはある意味「ダミー」だと言えます。

 

本当の気持ちとは

寂しい
つらい
悲しい
虚しい
恐い
不安だ
自分はダメなんじゃないか
わかってほしい
大事にしてほしい
見捨てないでほしい
助けてほしい
そばにいてほしい

そんなとてもデリケートな心です。

 

お父さんが心の奥で感じているのは、本当はこんな気持ちだったりします。

お父さんだって、ほんとのほんとはわかってほしいんです。

でも

そんな弱っちくて、甘ったれた気持ちなんか、男は持っちゃいかん!

とすりこまれているから、自分にこんな気持ちがあることなんか認めるわけにはいきません。

絶対に表に出すわけにはいきません。

 

こんな気持ちを感じたら余計みじめになってしまいそうだから、無意識に全部「怒り」に変換します。

とりあえず怒っていれば強そうに感じられますしね。

他人にぶつけていれば、自分を見なくてすむでしょう。

 

もちろんそこまで頭で計算しているわけではありません。

無意識に、気づいたら、
責めてた、怒鳴ってた、暴れてた・・・。

そうやって「黙ってるか・お酒飲んでるか・怒鳴ってるか」っていうタイプのお父さんというのは、

やはり気持ちを感じないようにしているという点では同じだといえます。

そして家族はこんなふうになる

「気持ち」がわからないお父さん。

そうすると、だんだんと妻や子供は

・お父さんは私の(僕の)気持ちをわかってくれない。

・あの人に言ってもしかたない。

・もう望まないから、いい。

と諦めるようになります。

 

お父さんを諦めたお母さんは、「気持ちのエネルギー」の注ぎ先を子供に向け始めます。

何をどんな形で注ぎこむかはそのお母さんの性格によって異なりますが、

その注ぎ込み方が過剰になると、こんどは子供が圧迫されるようになります。

 

お母さんの「気持ちのエネルギー」は、往々にして「お母さんのやむにやまれぬ気持ち」であったりして、

それは必ずしも「子供の気持ち」とは関係がない・・という場合も多々あります。

 

そうしますと子供は、そもそも気持ちがわからないお父さんに加えて「自分の気持ちを過剰に注ぎ込んでくるお母さん」というものも引き受けざるを得なくなったりします。

結局子供は、お父さんにもお母さんにも「わかってもらえた、共感してもらえた、受容してもらえた」という体験をほとんど持たずに育ち、自分の気持ちに自信が持てない子になっていきます。

 

そんな子供が、わけのわからぬ乾いた心を抱えた大人になっていきます。

気持ちなどというものはそもそも諦めて、さっさと自立して人に期待しないドライな人になる人もいます。

わかってもらえない悲嘆に何年も沈んで、社会に出てからも、痛い人間関係を繰り返す人もいます。

お母さんから注がれる過剰な気持ちに応えなければ・・・でも自分にはできない・・と葛藤する人もいます。

そんな不幸そうな(のように子供からは見える)お父さんやお母さんを幸せにしなきゃ!と、無理ながんばりをし続ける人もいます。

引きこもったり、病気になったりする人もいます。

 

そんなさまざまな子供が、それぞれの渇きを抱えて大人になっていきます。

 

でもね、そういうお父さんやお母さん、そういうお子さんを、いけない!と言っているのではありません。

ただもう、深く「仕方ないね・・・」と溜め息をつくほかありません。

 

誰が悪いのでもありません。

みんな、やむを得なくそうなったのだから。

そういう状況にあれば、そうなってしまうのが人間だから。

色々傷だらけな人間同士が作った家族ですから。

相互関係から生まれる家族のエネルギーがそうさせるのですから。

せつないけど、仕方ないね。

 

でも、大丈夫。

もしあなたがそんな家族像に思い当たるフシがあったとしても、決して「仕方ない」で終わりではありません。

気がついた人から、転換することができるからです。

 

きちんと自分の心に向き合って、絡まった糸をほどいていけば

いつからだって、家族も人生も変えていくことはできるのです。

まずは、気がついたあなたから。ね。

理性重視・感性無視が生む歪み

繰り返しますが、くれぐれも「だからそんなお父さんはダメだ!!」と言っているのではないのでね。

 

お父さんだって、たいへんだ。

お父さんだって、せつないよ。

 

だってしょうがないでしょう。

これまでの時代に男として生まれてきて、理性と合理、結果重視の会社社会に適応しようとしたら

感情やら気持ちやらなんてことは、切り離さなければやっていけないでしょう。

社会がそれを求めてないんですから。

 

子供の頃から「男は泣くな!」とか言われて育つわけだし。

一生懸命働いて稼いでくることが、家族に対する責任だと信じてがんばってきたわけだし。

お父さんにとって、「責任」とは「愛」の別名だったりするんだし。

お父さんだって、精一杯だ。

 

ただ、「感情」という回路を見失ってしまっただけなのです。

 

しかし。

それはこれまでの時代の、社会の価値観であったといえます。

本来は、

理性と感性
頭と心
行動と感情

両方あって人間です。

どちらか一方をないことにしていたら、バランスは大きく崩れてしまいます。

そのバランスの崩れが、一つは家族というものに出るのではないかと感じます。

 

過剰な理性重視・感性無視

このことの弊害が、家族関係の歪みのみならず、

鬱やさまざまな神経症・心身症の増加にもつながっているのではないかというのが、日々現場で皆さんに接している私の立場からの実感です。

しかし今、時代は変わりつつあります。

もうそんな一方に傾いた価値観や社会構造自体、変わっていかなきゃいけないね!

と感じて行動する人たちが、確かに増えているのです。

男性が感性を取り戻したら

もちろん、感情を切り離してしまうのは男性ばかりではありません。

女性だって、感情を切り離して、人のため、仕事のためとバリバリやるしかない場合もあります。

 

でも、女性はもともと男性に比べて感情への親和性が強いところがあるので、比較的ハードルが低いのです。

男性ほど「重症」にならない場合が多いといえるでしょう。

もちろん女性にだって、それぞれの課題というものもありますが、それはまた別の機会にするとして。

 

やっぱりここに関して、鍵は男性かな、と。

お父さんかな、と。

 

男性が感性を取り戻し、感情を取り戻し、自分の素直な気持ちを認め、受け止め、それを率直に語る言葉を持ったら。

それを本当に大切な人と分かち合うことができたら。

何よりその方自身が、肩の力が抜けて、自然な自分らしさを取り戻すでしょう。

 

そうすると、

パートナーシップが格段によくなるでしょう。

夫婦で気持ちを受け止めあう会話ができるようになると、そのやわらかな空気はすぐに、お子さん達にも伝わっていくでしょう。

家庭だけでなく、職場の人間関係も、職場の空気も、変わっていくでしょう。

 

男性がもっと、感性と本当の感情を取り戻したなら

 

砂漠のような地面はうるおい、

今まで生えなかったような芽が芽生え、

美しい花が咲く

居心地のよい場所になるかもしれません。

 

2014年11月17日投稿の記事を加筆修正しました

 

参考記事

 

 


この記事を書いた人

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大塚 あやこ

心理カウンセラー/講師/音楽家
一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社代表取締役
 
東京芸大作曲科卒。演奏家・作編曲家として20年間第一線で活動後、燃え尽き体験をきっかけに人生の転機を経て心理カウンセラーに転身。
悩みの根本原因に素早くアクセスする独自メソッド「ビリーフリセット®」を確立。個人相談から企業研修まで幅広く展開し、協会認定カウンセラーを多数輩出。Udemyオンライン講座「はじめての傾聴」は2万名超の受講者を誇る常時ベストセラー。 心の構造を論理的にモデル化する独自アプローチが、ビジネスパーソンから高い支持を得ている。

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