音楽における「アレンジ」つまり編曲。
その言葉は皆さん聞いたことがあると思いますが、具体的に何をするのか、知っていますでしょうか?
もちろん、音楽好きの方はわかっているかもしれませんが、意外と漠然として、あまりよくわからない方もいらっしゃるようなので、今日は編曲について語ってみたいと思います。
☆旧ブログ「大人の音楽レッスン」より
2014年5月に書いた記事を加筆修正しました。
作曲と編曲の違い
アレンジとは編曲のことです。
編曲とは何か?
まず作曲との違いをはっきりさせましょう。
ポピュラー音楽の世界ではほとんどの場合、「メロディーを作ること」を作曲といいます。
歌モノだったら、歌の部分ですね。
メロディーさえ作れば「作曲」として扱われます。
だから、音符とかコードとか、音楽のことはあんまりわかってなくても、センスがよくて鼻歌で作れちゃうような人は、それでも「作曲した」ということになり、ちゃんと印税が入ります。
しかし、メロディーだけで音楽になるわけじゃありませんね。
メロディー以外に、和音(コード)やリズムが必要ですし、他の楽器が後ろでいろいろやる必要があります。
それによって、曲の雰囲気が決まり、曲の具体像というものが構築されるわけですね。
つまり、メロディー以外の全部を考えること。
これが編曲ということになります。
(注:ただし、管弦楽などクラシックの場合は作曲/編曲一体型なので、またちょっと違います)
編曲の仕事の中身って
どんな雰囲気の曲にするために、どういうリズム、テンポにしたらいいのか。
どういう楽器を使って、それぞれがどういうことを弾いたらいいのか。
決めないといけません。
さらに、イントロはどうするのか、メロディーは何回繰り返すのか、
間奏は? その後の展開は? 終わり方は?
といった「構成」も考えなければいけません。
じゃあ、その構成を作るために、
どの楽器が、どんな音で、どこで出てきて、何をするのか。
聴いている人が飽きないためには、少しずつ何か変えていく必要もあるし。
どこで盛り上げて、どこで静かになって、どこで訴えるのか。
盛り上がるためには、どの楽器が何をすればいいのか。
切なくするためには、どの楽器が何をすればいいのか。
そういったこと全部。
どんな音を、どんな和音とリズムで、どう鳴らせばいいのか、弾けばいいのか全部決めて、組み立てて、楽譜に書いて、指定して、演奏者に演奏してもらう。
あるいは、コンピュータでプログラミングして音にしていく。
この作業を編曲(アレンジ)といいます。
どうです、大変でしょう?
ええ、大変ですよ〜。
それでいて、印税は入らない仕事です(痛)。
私自身、音楽キャリアの最初の頃はアレンジャー(編曲家)として仕事をしていました。
のちに作曲家の方にシフトしていったのでした。
アレンジャーという人たち
手間ヒマという意味では、作曲に比べてその仕事量は膨大なものになります。
それをやるのがアレンジャー(編曲家)です。
これは作曲と違って、インスピレーションだけじゃできません。
広く深い音楽知識と技術が必須なので、バリバリの専門職です。
アレンジャーという人たちは、どの楽器をどう鳴らしたらどんな音がして、どういう音を、どう組み合わせるとどういう効果が出て、どういう情感を呼び起こすか・・・・
そういうことを熟知している人たちです。
そういうわけで、メロディー以外の全部を作って決めるのがアレンジャー。
さらに、アレンジャーが決めたことを、音として「聴こえる化」しているのが演奏家。
しかし
「この曲いいね〜」と言われて注目されるのは、作曲家。
もちろん、軸となるメロディーあってのその曲ですから、それでいいんですけどね。
そして
「演奏グッとくるね、うまいね〜」と言われて注目されるのは、演奏家。
もちろん、素敵な音が鳴ってこその音楽ですから、それでいいんですけどね。
それを支える編曲という存在に気づいている人は、一般的には少ないと言っていいでしょう。
そういう非常に裏方的な仕事がアレンジ(編曲)であり、それをやる職人が、アレンジャーであること。
名前もそんなに出ないし、印税も入らない(しつこいw)。
よっぽどの音楽マニアじゃないと、つとまらない仕事です。
時々でいいですけど、皆さんが聴いている音楽の、実質半分以上がアレンジャーの仕事であることを、たま〜に気づいて思い出していただけると。
歌だけじゃなくて、たまにはバックの演奏の動きも聴いていただけると。
ひっそりとうれしかったりする職人さんも、きっといることでしょう。
ひっそりと、私からも、よろしくね。