さて、前回の続きです。
前回の記事はこちら
私が親の価値観と違うことしたら、親が悲しむんだもん。怒るんだもん!泣くんだもん!
親を悲しませるわけにはいかないもん!
だから、私が望むようにすることはできないんだ。
やりたいけど、やるのは無理なんだ。
このような葛藤を持つ方は少なくありません。
前回の記事でとりあげた重要なビリーフ(信じ込み)は
「親を喜ばせなくてはならない」
というものでした。
そして、今日はもう一つ
「親を悲しませてはいけない」
というのも、思いのほか自分を縛っているビリーフであることをお伝えしたいと思います。
原点は幼少期
親を喜ばせなくてはならない
親を悲しませてはいけない
当たり前の常識のように思える言葉ですが、これもれっきとしたビリーフ。
思い込みのプログラムです。
この感覚は実は幼少期の情動と関わりがあります。
子どもは元々、とってもお母さんやお父さんが大好きです。
だから、
「お母さんに笑顔でいてほしい!」
「お母さんの悲しい顔はイヤ!」
というきわめてシンプルな願いを持っています。
でも、お母さんもお父さんも人間ですから、生活がたいへんだったり、夫婦の問題があったりすると
辛そうだったり
悲しそうだったり
機嫌が悪かったり
けんかして怒鳴ったり泣いたり
することもあるわけです。
そういう親の様子を見て、子供は
「お母さんかわいそう。」
「お父さんかわいそう。」
と思い込み、けなげにも
「お母さん(お父さん)が悲しまないためにはどうしたらいいんだろう」
と考えるらしいのです。
そしてできる限り「いい子」にしたり、少しでも親を喜ばせるようなことを言ったりやったりします。
でも、いくら子供ががんばってお母さんやお父さんを幸せにしようとしても
根本的には大人の問題ですから、やっぱりお母さんやお父さんは悲しそうだったり、怒ってたりする。
こんなにやってるのに、結局ちっとも変わらない。
そうすると子供は
「自分はお母さんを助けてあげられない!
お父さんを幸せにできない!
できない自分が悪いんだ、足りないんだ!」
という、無念と罪の意識を背負うようです。
もちろん、全部無意識レベルです。
つまり「お母さんやお父さんを喜ばせる、幸せにする」という使命感と責任を、ちっちゃな子供は自分で勝手に持ち
実際それができずに挫折してしまうんですね。
それえゆえに
お母さんやお父さんが悲しそうだ、ということに対して自分の責任だと感じ、罪悪感を持ってしまうわけです。
その罪悪感は、大きくなっても大人になっても、心の深くにはずーっと残っています。
親が悲しい顔や怒った顔を見せるたびに、自分の罪悪感が刺激されて、いてもたってもいられなくなるのです。
このあたりはとても深いテーマですし、人それぞれ背景も事情も違うので、あまり詳しく述べることはできませんが、
カウンセリングでは、このレベルを丁寧にひもといていくと、けっこうスッキリ荷物を降ろして進めるようになるケースが多いです。
親は悲しんだり怒ったりしたらいけないの?
さてその上で、ここが考えどころです。
親を喜ばせなくてはならない
親を悲しませてはいけない
というのは実は、裏を返せば
親はいつも笑顔でいてくれなきゃヤダ!
親は悲んだり怒ったりしたら絶対にヤダ!
と言っているに等しいのです。
いつも24時間笑顔でいて!
いっつも笑っていて!
365日幸せそうにしていて!
ぜったい悲しい顔はしちゃダメ!
怒るなんてぜったいダメ!
って、あなたが誰かに言われたらどんな気分ですか?
「ちょっと待ってよ、ムリムリ〜」って思うでしょ。
あなた自身は、悩んだり悲しんだり怒ったりすることはないですか?
ありますよね?
悩んだり悲しんだり怒ったりするけど
また立ち直ったり、成長したりして
乗り越えてきたりしませんでしたか?
しましたよね?
そして、悲しむことや腹立つこともあれば、喜ぶことやうれしいことだって色々あるのが、日々の日常ってもんではなかったでしたか?
ですよね?
じゃあ、どうしてあなたの親だけは、いつもぜったいに笑顔で喜んでなきゃいけないのかな?
悲しむことや怒ることは、親には許されていないのかな?
ずいぶん不公平ですね(笑)
親が喜んでいてくれていちばん都合がいいのは
誰でもない、あなた自身ではなかったでしょうか。
それだと自分が安心できるからじゃないですか?
親が悲しんだり怒ったりしたらイヤで都合が悪いのは
誰でもない、あなた自身ではなかったでしょうか。
それだと自分が不快だからじゃないですか?
なんだ、自分の都合じゃん(笑)
親思いというより、結局自分じゃん(毒)
「たのむから、私が気持ちいいように機嫌よくしててよ!」ってことじゃん。
あー自分、自分(笑)。
親のほんとの気持ち、どこまでわかっていたかなあ?
だって人間だから
ちょっとわざわざ毒な見方、してみちゃったけど、でもそうだともいえるのです。
いいんですよ。
それが子どもの本能であり、そこには確かに、子どもなりのせいいっぱいの愛もあったのです。
さあ、大人になった今、ここから卒業です。
もう一度、一人の人間として自分のことも、親のことも見てみましょう。
そう。
あなたにも、普通の人間として、喜ぶ自由も悲しむ自由も怒る自由もあるように
親にだって、普通の人間として、喜ぶ自由も悲しむ自由も怒る自由もあるんです。
そして、それはあなたの「せい」とは全く関係なく。
親は親の都合と気持ちで、喜んだり悲しんだり怒ったりしているのです。
大丈夫、あなたのせいじゃありません。
あの時だって
あなたが悪い子だから、なにかができなかったから、お母さんが悲しそうだったのではありません。
あなただけが理由で、お父さんが怒っていたのではありません。
きっかけはあなたのことだったかもしれなくても。
もっと深いところには、その人ならではの深い事情があったのです。
大人には大人の事情があり、あの人達にはあの人達の、限界も弱さもありました。
みんな自分のことでいっぱいいっぱいなんです。
参考記事
あなたが何かしたってしなくたって
親は自分の気持ちで、喜んだり悲しんだり怒ったりします。
したっていいじゃありませんか。
人間なんだから。
どうしてそんなに、親の気持ちの「ハンドル」を自分が握らきゃいけないと
思っちゃったかね〜
不思議だねえ〜(笑)
親の機嫌はぜんぶ私の「せい」だと思ってしまった・・・
それが幼いころの罪悪感。
けなげな愛ゆえの誤解です。
しかたないね。
大好きだったもんね。
もういいよ。
もういいね。
人間に戻ろう。
人間に戻してあげよう。
参考記事
それでも親子であることに変わりはないから
親を喜ばせなくてはならない
親を悲しませてはいけない
このビリーフが解けたら、色々なことがとても楽になります。
気兼ねなく自分の人生を生きることへと向かっていけるようになります。
そうしたら、一人の大人として、人間同士としてのもっと自然な関わりが生まれて
あなたがしたことが自然と喜ばれることもあれば、べつに喜ばれない時もあるでしょう。
できる時にはできることをすればいいし、できない時には無理をすることはないでしょう。
親が喜んでも、喜ばなくても
どちらでもいい。
なぜなら、それでも
私は親を大切に思っているから。
どちらにしたって親子であることに
なんの変わりはないのだから。
これで、よくはありませんか?(^ ^)
さあ、それでも
親の望みを叶えるために、まだ我慢する?
このシリーズは終わりです。