■顕在意識と潜在意識
自分の中にある、自分を制限していたビリーフ(思い込み・信念)を見つけることができて、なおかつそれを手放すことを決意しさえすれば、取り除くことができる・・・・私は、それはある程度可能なことだと思っています。
あるいは、完全に取り除くことができなくても、自分がどんなビリーフを持っていたのかに気づいて知ることができれば、得体の知れないビリーフに無自覚に振り回されることはなくなってきます。
実際に、個人セッションを受けてくださった方々からは「ビリーフがみつかって腑に落ちた」「楽になった」「感じ方が変わった」などの感想をいただきます。
では、自分の中にあるビリーフをどうやったら見つけられるのか。
一生懸命自分について考えてみれば、わかるのでしょうか。
これまでの自分を振り返ってみると、わかるのでしょうか。
実は、そこに一つの難しさがあります。
ビリーフというのはもちろん一つだけではなく、私たちの中には多種多様なビリーフが複合・集積していて、いわば「ビリーフ・システム」というものができあがっていると考えることができるのですが、このビリーフ・システムはどこにあるのかというと、潜在意識ということになります。
潜在意識の話が出る時、よく引き合いに出されるのが、氷山の絵。
コレですね。
よく言われるのは、
私たちの顕在意識(わかっている領域)はわずか5%程度だ、と。
あとの95%は自分ではわからない領域なのだ、と。
潜在意識というのは、自分ではわからないからこそ「潜在」というのですね。
昔、フロイトやユングはこれを「無意識」と言っていましたね。
まさに意識できないから無意識。
あ、顕在と潜在がまぎらわしくならないように、字を色分けしております。
そして、ビリーフシステムはこの、自分ではわからない潜在意識の領域にあるものなのです。ということは、普段の意識ではほとんど気づくことができないのがビリーフだ、ということになります。
一方、自分でわかるところは顕在意識。
私たちが普段、思ったり考えたりしているところ、自分でわかっている自分のことは顕在意識の領域になります。
だから、皮肉なようですが「私にはどんなビリーフがあるんだろう。あれかなー、きっとこれかなー?」と考えている顕在意識の中ではビリーフがみつからない、ということになるのです。
そこが、難しいところであり、やっかいなところです。
■「自分ではわからない領域」に答えがある
個人セッションに来てくださった方が寄せてくださった感想を、ホームページにアップしています。その一部をご紹介します。
●「多分自分のビリーフはこれで、これが自分を苦しめている原因なんだろう」と、ある意味決めつけていました。しかし、ワークを通してわかったビリーフは全く別のものでした。そのビリーフは自分では少しも意識していないものでした。
ワークに参加していなければ一生見つけるとこはできなかったかもしれません。
(30代・男性)もっと読む→
●なんとなく、自分のビリーフはこういうものが出てくるだろう、とアタリを付けてしまっていたのですが、自分が想像していたものとは全く違う想いが見つかり、非常に驚きました。
(30代・女性)もっと読む→
こんなかんじなのです。
意識できない・考えられない領域にあるからこそ、これまで気づかなかったし、変えることができなかったわけです。
そこに、私たち専門職が関わってワークすることの意味があります。
ビリーフワークだけではありません。
私が師事した先生や仲間が関わっている色々な心理ワークやセラピーの世界では、「潜在意識の領域に本当の答えがある」というのが基本的なスタンスとなっています。
潜在意識には、ビリーフだけでなく、ネガティブ/ポジティブひっくるめてあらゆる感情や記憶、願望や英知まで眠っています。
顕在意識の「わかっている領域」5%の範囲で考えても、どうにも動かない、変えられない、わからないからこそ、その5%領域を超えたところ、つまり95%の潜在意識の領域に、答えをみつけにいくのです。
もちろん、みつけにいくといっても、そこはその方ご自身の潜在意識ですから、まさにその方の中に答えがあるわけです。他人の答えを引っ張ってくるわけではなく、気づかなかった自分自身の深部から答えをみつけるわけですから、ご本人が実感し「腑に落ちる」ものとなります。
潜在意識にアクセスし、潜在意識から浮かび上がってくるものをキャッチし、潜在意識が伝えたがっているメッセージをご本人が聞いて対話できるよう・・・そのための手法を提供し、サポートするのが、専門職としてのセラピストやワーク・ファシリテーターということになります。
さきほどの女性の言葉をもう少し引用します。
●会話中、自分では全くの無意識だったのですが、私がある言葉を何度も口にしていて、それを彩さんが見逃さずにキャッチしてくれました。それこそが、私の根源的なビリーフなのだと思います。
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「無意識」。出ましたね。
そう無意識なんです。無意識だから意識できない。
でも、第三者が注意深く聴けば、言葉の奥からビリーフの「尻尾」がチラチラ見えることがあります。それこそが、無意識(潜在意識)領域に存在するビリーフに迫っていくカギになります。
「自分でわからない自分」をみつけにいく。迫っていく。
それはちょっとドキドキするけど、とても楽しい冒険です。
■潜在意識の声を聴く
そういうわけで、顕在意識で考えてもビリーフはみつかりませんよ・・・という結論になってしまうのですが、それだと「結局、個人セッションに来なきゃダメよ」って言ってるみたいで、半分当たりなのだけど、それもちょっと残念なので。
そこで、自分自身でもなんとかビリーフに迫ってみたいという方のために、少しヒントを考えました。
顕在意識で考えてもわからない、顕在意識に答えはない、と言いました。
ということは、ご自分自身で少しでも、潜在意識の声を聞けるようになればいいのではないでしょうか。
潜在意識の声はとっても小さく微かなものです。それに対して、顕在意識は声がデカくてとってもおしゃべりです。その上、顕在意識はけっこう「オレ様」なので、潜在意識の声なんかホントはあんまり聞きたくありません。
顕在意識がバリバリ元気だと、潜在意識の声は聴こえなくなってしまうのです。
そこで、顕在意識にはちょっと静かに黙っていてもらうようにします。
そのための方法が、呼吸です。
静かな場所で目を閉じて、ただ呼吸に意識を向けて、
吐く息、吸う息に気づく。
意識を頭から降ろして、息が通る鼻、喉、胸へ・・・
そして体全体へと広げていきましょう。
それだけをずーっと続けていきます。
それはすなわち瞑想であり、現代の心理学で「マインドフルネス」といわれる意識状態です。だんだんと思考が静まり、頭の中のおしゃべりと喧噪が静まっていって、ゆったりと「今、ここ」を感じることができる状態、それをマインドフルネスといいます。
その状態にあると、自分の中(身体や感覚)で起こっていることを「感じ」「気づく」ようになってきます。ここがポイント。「考える」のではなく「感じる」こと。「考える」のは顕在意識の仕事。「感じる」のが潜在意識の仕事です。
そして「感じている」ことに「気づく」こと。そこに潜在意識からのメッセージが隠れています。
その時そう感じている何かがあるのだったら、それは理性で疑ったり、正しいとか正しくないとか判断する必要はありません。そう感じているものをそのまま「あー、そう感じてるんだなー」と受け取って、ちゃんと感じてあげましょう。
最初からうまくいかなくても当然です。つい何かを考えていたら「あー、考えだ」と気づき、また呼吸に意識を戻しましょう。考えてるのか、感じてるのかよくわからなくなっても、それもいいでしょう。
これは、顕在意識にちょっとお休みしてもらう練習です。
そうやって、日ごろから顕在意識に少しお休みしてもらう時間をとっていると、ふとした瞬間に、ピョコっと潜在意識からの声が浮かび上がってくることがあります。そして、その声をキャッチできるもう1人の自分というものにも、だんだんとリアリティを増してくるでしょう。
まずは、そんな練習からしてみることをおすすめします。
言い忘れましたが、そのために大事なことは、静けさ!
くれぐれも、静かに。静かに。
テレビもラジオもステレオもパソコンも。音の出るものは消しましょう。
ゆるやかなヒーリングミュージックならいいんじゃないの?という意見もあるかもしれませんが、私個人的にはそれもおすすめじゃないです。
それとて五感を使うものであり、自分以外のものだからです。
外側に向いた五感のスイッチを落とし、自分の内側へとライトを照らすことが大事だと思うからです。
それほど、自分自身の内側の声、潜在意識の声は、デリケートでかき消されやすいものなのです。だから、気づかない。わからない。だから「潜在」っていうんですね。
そこからさらに、ビリーフに迫るためのヒントを、またこんど書いてみたいと思います。