今日、「頭サイズの波」というやつに、生まれてはじめてぶつかってきた。
私は今年の6月からボディーボードをやるようになり
プロのレッスンを受け、自分のボードをオーダーし、先輩ボーダーさんをご縁に鵠沼通い・・・という展開になっているのだ。
今日の鵠沼は、台風前のウネリが入り、サーファー大喜びのいい波が打ち寄せた。
波乗りの世界では、波の大きさを、ヒザ、モモ、コシ・・等、身体のパーツの高さで表現する。
今日は「アタマ」と先生が言っていた。
「アタマ」とは、人の身長くらいの高さであり、つまりかなりデカイのである。
ボディーボード始めて1ヶ月の初心者の私が、自分一人でそんな日の海に入るわけがないのだけど
この日申し込んでいたレッスンは平気で決行だったので
先生ともう一人の生徒さんとでいざ海へ。
もちろん波打ち際には、普段より何倍にもサイズアップした波が、大きく崩れてゴンゴン打ち寄せている。
そこをかき分け、どんどんやってくる波をさらに乗り越え、先生ともうお一方はズンズン沖に出ていく。
私は崩れる波に吹っ飛ばされそうになって出ていけない。
次の大波を越えられない。
苦闘しているうちに二人は彼方へ消えて行き、私は自分の圧倒的な無力を悟った。
無理。今日は私には無理!
波打ち際に立ってただ沖を見ていることにした。
ああ、一人ぼっち・・・
あれ〜 いちおうレッスンなんだけどな(笑)
しばらく休憩していたら先生が戻ってきたので、もう一度がんばって海に出る。
こんどは一緒に付き添ってくれた。
波に乗る以前にまず乗れる場所まで出なければならないので、初心者にとってはそこまでが一つのチャレンジ。
立て続けに目の前にそそり立ってくる波に気合で体当たりして、時々頭から突っ込んで突破。
(ドルフィンスルーなんていう技はまだできないのだ)
どうにか目標の地点まで漕いで到着。
ふう〜〜、体力!
波のパワーってすごい。
そして先生のアシストを得てどうにか3本ほどテイクオフして乗ることができた。
怒涛の真っ只中でボードをつかみ、どうにか姿勢を保って進むことで精一杯。
今自分がどの位置でどうなってるのかなんて、見渡す余裕もないです、もう。
まあしかし、いい経験した。
普通に穏やかな海水浴だけしてる人生だったら、こんな日の海に入ることもなかったし
こんな大波に体当たりすることもなかった。
やってみるとどんな感じなのか。
やってみて身体でわかることだ。
こういうことなのか、とちょっと知った。
そしてこういう海ほど、上級者の天国。
初級者は敗退。
それがリアルな実力の世界。
この感じは覚えがあると思った。
ジャムセッションだ。
ジャズクラブで、いろんな楽器のプレイヤーが集まり、その場でメンバーを組み合わせて即興で演奏する。
そんな遊びをジャムセッションという。
プロ、セミプロ、アマ、初心者・・・いろんなレベルの人が同じステージで演奏するところも一つの面白さではある。
初級者レベルに上級者の人が合わせてくれることもある。
そんなゆるくてなごやかなセッションもあるけど
しかし、上級者同士で高速で難しい曲をゴンゴン回して、初級者が振り落とされて惨敗するようなセッションもある。
やっぱりここも実力の世界だから、上手い人が天国で、下手な人は敗退の世界なのだ。
だから、悔しかったら練習して上手くなってこい!という話。
この感覚を私は音楽の世界で知っているから
そして初級者で惨敗の経験も、上級者で余裕〜の経験も、両方あるから
ああ、そういうことだよな、と波乗りの世界に重ねて思ったのだ。
誰もが初心者から始めざるを得ない実力の世界。
スポーツや芸事をはじめとして、あらゆる技能や学問、専門分野、みんなそうなのだ。
その結果が如実であるほど、人は謙虚になるのかもしれない。
何をどうあがいても初心者でしかない自分を受け入れること。
下手クソさ、無力さ、わからなさ、カッコ悪さを、我が身にホールドして辛抱すること。
開き直って未熟をさらし、素直に先ゆく人に教えを乞うこと。
一つ一つ体当たりでぶつかって、何度も惨敗しながら、それでもやっぱり続けること。
そんなプロセスは、いくつになってもなかなかいいものだと思う。
そうやって、気がついた時に少し振り向いてみると、いつのまにか「ちょっと馴れた人」になっているのだろう。
夏はまだまだ続く。