クリエイター稼業で直面する9つのテーマ

ミュージシャン、アーティスト、デザイナーなど、いわゆるクリエイターとしてフリーランスで生きるということは、自由で充実してとても楽しいこともある反面、この仕事特有の葛藤や壁などにぶつかることもあります。

フリー、会社員、自営業・・・どんな職業もたぶんメリットとデメリット、リスクとリターンは半分半分。
ただその性質や振れ幅が違うだけかもしれません。

その中で、自分を知り、自分を磨き、人に貢献し
より進化・深化・新化していく。
そんな道を誰もが歩いているのでしょう。

私自身、大学卒業以来一度も会社に属さず、20年超フリーランスで音楽をやってきたのですが、自分の実感で言うとフリーのクリエイター稼業ってこんなかんじです。

クリエイター稼業の特徴と直面するテーマ

1.経済的な安定がない

稼げる時はすごく稼げる可能性もあるけど、ない時はほんとにない。
常時その変動の波の中に身を置くことに慣れる必要があります。
誰も保証してくれる人はいません。
そのかわり全部、自分の判断と裁量、舵の取り方がモノをいう面白さがあります。

2.人から声がかかって仕事がやってくる

誰かに雇われていないので、するべき仕事が決まっているわけではありません。
ご縁とつながりで「お願いします」といわれて仕事が発生します。

しかも、自分自身の値段を自分で決める、あるいは相手の提示に対して自分で交渉するというのも一つの特徴ですね。 

3.仕事が来るか来ないかはわからない

人によっては、ある程度固定的な取引先を持つ場合もあるかもしれませんが、だいたいの場合、仕事がくるかどうかは「風の吹き回し」も大きいもの。
「おお、こんなの来たよ!」
「なんで今それ来るかなあ?」
「やべ、ちっとも来ないよ」
みたいな。
そして、来る来ないのその理由はあまりよくわからない(笑)
自分自身の状態も影響あるとともに、「天の采配」を感じずにはいられないこともしばしばです。

4.他人と自分のすり合わせ

クリエイティブな仕事は、個人のセンスや好みに由来するところが大きいです。
依頼者の要望と自分のセンス(やりたいこと)が、必ずしも合致するとは限りません。
その時に、どう折り合いをつけるか。
そこがピッタリ合って自分の力を生かし切れた時は本当に幸せだし、逆に「負けた、折れた、妥協した」と思わざるをえないこともあります。

「妥協なく自分が思ういいものを追求したい」というクリエイター魂と「でも仕事が、生活が」という日常意識とが自分の中で摩擦を起こすこともよくあります。
これは、プロとして活動する誰もがぶつかる課題だろうと思います。

5.認められることへの焦り

そういうわけで「仕事は人からやって来るもの」ですから、人からどう評価され、認められているかということが、仕事の有無にも、そしてクリエイターとしての自分の価値にも直結します。
だからこそ「認められなきゃ!」という思いが切実にならざるをえません。
そこから「あの人は認められている、自分はまだまだこれくらい」といった比較の心がザワザワしだすこともよくあります。

劣等感、優越感、憧れ、嫉妬、誹り、焦り、不安、渇き、諦め、・・・・
そういった自分の中のあまり見たくない感情ともつきあうことになりますし、感情に呑まれると本当に一喜一憂、アップダウンしまくりのジェットコースターのような精神状態になってしまいかねません。

だからこそ、自分の立ち位置・あり方を自分でいつも見据えていく冷静さが必要かと思います。

6.自信の問題

上記と関連しますが、自分の作品や仕事に自信が持てるか、というのもいつも揺れ動きがちなテーマ。
そこを掘り下げると実は自信の問題は、作品や仕事の問題ではなく、自分自身の存在そのものという、いわゆる根本的な自己肯定感の問題に行き着くことなのですが、そういうことも実際の表現や仕事の質に如実に作用することになります。

7.本当にやりたいこと問題

人さまの要望に沿って自分のスキルを提供し、お金を得るということを繰り返しているうちに、ふとある時、「自分がほんとにやりたいことって何だっけ?」という問いが、心の奥からやってきてしまうこともあります。

好きなことを仕事にしていたはずなのに、気がつくと、今は好きかどうかよくわからないかも・・・というモヤモヤも、経験したことがある人は多いのではないかと思います。

8.まだまだ「足りない」問題

才能、技術、スキル、知識、経験、引き出し・・・それがたくさんあればあるほどすばらしいような気がして、でも自分にはまだまだ足りないような気がして、ずーっと「足りない感」に苛まれながら、それでも努力を続けざるを得ない。
そんな終わりのない努力の道を、楽しんで歩くのか、自分にムチ打って足を運び続けるのか、途中で疑問を感じて別次元のパラダイムに転換するのか。
そんな岐路に立つことも、もしかしたらあるかもしれませんね。

9.才能枯渇の不安

ものを作るということは、いつも自分の中からインスピレーションや創造性を汲み出す必要があります。
それこそがクリエイターという仕事の醍醐味ですし、それゆえ時には「インスピレーションがこない」「生み出すことができない」という苦しみもついて回ります。

長期にわたってそれが続けば「もうダメかもしれない。才能が枯れてしまったのでは・・」という不安や恐怖にかられる場合も、ないわけではありません。
それはすなわちクリエイターとしての自分のアイデンティティーや死活問題にかかわることですから、それはたいへんな苦しみになっていきます。
そんな壁がやってくることが、ないとはいいきれません。

いつも「自分」に戻る

必ず全員にあてはまるわけではありませんが、多少なりとも以上のようなテーマにぶつかりながら、乗り越えながら、みんなプロをやっているんだなーと思います。

結局、ポイントはいつも「自分どうなのよ?」という問いですね。
なにかにつけて、そこに向き合わざるを得ない。

まさに「自分軸」を立てていることが大事なんだと思います。

他ならぬ私自身、ただでさえ波の激しいミュージシャン人生に、数年前、さらに大地震のような地殻変動が起こって、根底から自分のことを問い直すことになりました。
参考記事:芸大まで出て20年プロをやった私が、音楽に燃え尽きた理由

それで、心のしくみを突き詰めて知りたくなり、自分の仕事のフィールドを心理カウンセリングの世界へも広げて、今は音楽・心理、両輪で回すのが一番心地の良い居場所であるというところに落ち着いているわけです。

そんな今の私だからこそできることがあります。それは

「壁」を前にしたクリエイターの気持ちが同じ目線でわかり、それを超えるお手伝いができること。

自分でよくわからなくなってしまった「クリエイター魂」をもう一度一緒に見つけていくサポーターになること。

心の奥にひっかかっている「重石やトゲ」をとることで、今以上に創造性を解放することができることをお伝えし、その道筋をガイドできること。

今の私が音楽家でありカウンセラーであるということで、こういうことができるんです。

以前、個人セッションにいらしたデザイナーさんが、そうやって乗り越えてゆかれた感想をくださった記事があります。
→  過去記事:クリエイターにはクリエイターの悩みがあるから

丸山裕之さんのこと

さて、私のライブでも共演していただいている、サックスの丸山裕之さんとは、まさにそうやって出会いました。

もう数年前ですが、私の個人セッションに申し込んでくださったのがきっかけ。

丸山さんは、作編曲家/サウンドデザイナー/サックスプレイヤー というマルチなクリエイターとしてキャリアを積んでこられましたが、ある時期から「このままでは先へ進めない」と感じて、私のことをみつけていらしてくださったのでした。

決め手になったのは、私が作曲家として以前手がけた「ゼーガペイン」というアニメのサントラ盤だったそうです。
以下、ご本人の談です。(掲載ご了解済みです)

「単なるカウンセリングだったら行ってたかどうかはわかりませんでしたが、サントラを聴いて、これほどの音楽を作れる人になら、同じく音楽をやる人間の悩みを理解して頂けるかと思ったのがセッションを受けたきっかけでした。」

とのこと。
そうやって音楽から信頼してくださったこと、本当にありがたく思います。

その後数回のセッションを通して、過去〜現在を整理し、音楽との関係を結び直し、未来へ向けてのヴィジョンを描いてゆきました。
次第に気持ちは軽くなり、仕事に対しても新たな心境が訪れていったようで、現在はお仕事もかなり順調になり「前とは全然違います」とのことです。

クリエイターの心理サポート。
このフィールドは、こんな私ならではのできることの一つだと思いますので、これからも必要な方に届いていくといいなと思っています。

 

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この記事を書いた人

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大塚 あやこ

心理カウンセラー/講師/音楽家
一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社代表取締役
 
東京芸大作曲科卒。演奏家・作編曲家として20年間第一線で活動後、燃え尽き体験をきっかけに人生の転機を経て心理カウンセラーに転身。
悩みの根本原因に素早くアクセスする独自メソッド「ビリーフリセット®」を確立。個人相談から企業研修まで幅広く展開し、協会認定カウンセラーを多数輩出。Udemyオンライン講座「はじめての傾聴」は2万名超の受講者を誇る常時ベストセラー。 心の構造を論理的にモデル化する独自アプローチが、ビジネスパーソンから高い支持を得ている。

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