「欠点を直す」教え方
「欠点」てよくいいますね。
欠けているところ、足りないところ、
よくないところ、ダメなところ・・・
みたいなかんじで、あんまりうれしい言葉ではありませんね。
私たち、漠然とこんなふうに思っていたりしないでしょうか。
欠点は直さなければいけない。
欠点を直していけば、全体がよくなる。
これまでの日本の学校教育の影響もあって
私たちの中にこういうマインドセットが
刷り込まれているかもしれません。
どうしてもね、
ほめてのばす より
足りないところを直させて叱咤激励
みたいな教えられ方に
多くの人は馴染みがあるのではないでしょうか。
でも、ちょっと考えてみましょう。
欠点を直せばよくなる。
それは本当なんでしょうか?
レコーディング現場で
私が作曲家/アレンジャーとしてやってきた音楽の世界。
レコーディング現場では、
スタジオミュージシャンに演奏してもらって、
いい演奏が録れたら「OK」を出して採用させてもらいます。
ちなみに、私の考えるいい演奏とは、
そして、こちらの意図が表現されていることに加えて、
イキイキしていて、エネルギーがあって、
表情豊かな演奏、というかんじですね。
さて。いい演奏を録りたいからといって
足りないところ、イマイチなところばかり指摘して
その都度直してもらっているとどうなるでしょうか?
つまらない演奏になることが多いです。
間違えていないけれど、
譜面どおり、指示どおりだけど、
小さくまとまっちゃって勢いのない
いわゆる「守りに入った」演奏になります。
そこらへんは、ミュージシャンの方の度量や性格にもよりますが
「間違えないように、指摘されないように、相手の細かい意向に沿うように」
が最大目的になってくると、
どうしてもそうなってしまうんです。
それゆえ、結局は
何にも言わないでとりあえず録った
一番最初のテイクがいちばん良かった・・・
なんてことはよくある話です。
それなので私は
「欠点を直していけば、全体がよくなる」というのは
たぶん違うな、と感じています。
私の経験上では、
演奏の前にその曲の意図やイメージ、
「こういう気持ちで弾いてほしい」ということを
感性の言葉で伝えたら
奏者のエネルギーがブワッとまとまって
一発OKのいい演奏が録れたということが多いです。
そういうところから私が学んだのは
欠点にフォーカスするよりも
今やろうとしていることの目的と方向を全体が共有して
その人、その集団のベストを注いでもらうというやり方が
結果として全体の一番いい状態を引き出すことになる。
という原則です。
つまり
目的地を示す、ということです。
そして、そうやって
全体の一番いい状態を引き出すことができたら
細かいことはそれほど気にならなくなるものです。
その方が自分もみんなも楽しいし、
やりがいを感じることができます。
自己成長において
この原則はきっと
自己成長という面においても言えるのではないかと思います。
「欠点を直せば、自分が良くなる」
そう考えて、欠点を探して、
反省して、直そうとして・・・・
そうやっていると、どんどん自分が小さくなります。
力の入った努力をし続けて、
そのわりにはいざという時、力が発揮できない・・・
そして「またダメだった」と自己嫌悪・・・
などということにもなりかねません。
いつも「自分は足りない、欠けている」と思わなければならないので
心が落ち着くことはありません。
それよりも、
自分の向かうべき方向、ヴィジョンを見て
自分という人間全体のエネルギー・活力を上げると、
もともとあった良いものが自然に現れ、
欠点のようなものは自然にひっこみ、
全体として、ベストな姿になっていくのではないでしょうか。
欠点にフォーカスしすぎないこと。
さらに言えば
「欠点」だと思っているのは思考の罠であり
元々どこにも「欠けたところ」などないのだいうこと。
そのことが腑に落ちていったら、
もっともっと自分らしく、恐れることなく
力を発揮していけるのではないかと思います。