即興で音を出していくことで、
隠れていたご自分の気持ちをしっかりとつかまえたKさん。
けれど、大好きなお花の仕事に戻ることを具体的に考えたとたん
「でも、〇〇だし、〇〇がないし、〇〇は不安だし、〇〇はどうするのよ・・・」と
「もう1人の自分」が色々ダメ出ししているのがわかりました。
前回まで
「本当にやりたいこと」にOKを出す・1
「本当にやりたいこと」にOKを出す・2
「本当にやりたいこと」にOKを出す・3
■「2人の自分」を音楽でやってみる
そこで、私はもう一つの即興を提案しました。
好きなお花に関わって「大好き!やりたい!楽しい!」という
やる気いっぱいのKさんと、
それに対して
「何言ってるのよ、〇〇だし、〇〇がないし、〇〇だから・・・」と
ダメ出しするKさん。
この2つを、役割を決めて音でやってみましょう。
どちらの役をやりたいですか?
私はどっちをやりましょうか?
このように、自分の中で対立する要素をキャラクター化して対話させる手法は、
ゲシュタルト療法の「エンプティ・チェア」をはじめ、
色々なメソッドで取り入れられていますが、
これもそのような考え方から来ています。
Kさんは、「ダメ出しする方」をやってみたいというので、
私は「お花が好きで楽しくてしょうがない方」をやることになりました。
Kさんの希望で、私は再びピアノ。Kさん自身は太鼓を手に持ちました。
私のピアノは、先ほどの即興で最後の方に出てきた、
楽しさが止まらないようなKさんの気分を引き継いで、
アイリッシュダンスのような明るく踊るような曲調を奏でていました。
私が、踊って、はねて、はしゃいで、「わーい\(^o^)/ 」という気分で
楽しくやっているところに、
Kさんが太鼓で「ドンドンドンドン!」と何かダメ出しを言ってきます。
かまわず弾いていると、
こんどは鈴が「ガシャガシャガシャガシャ!!」と鳴って、
私に「やめろ」と言っているかのようです。
しかし不思議と、弾いている私は、
そうされたからといって、ちっとも気持ちが揺らがないのです。
「ん?なんか言ってるのね。でもこっち楽しいもーーん♪」
と、いっこうに気に留めず楽しい音楽は続きます。
解説しますと、
これは私がKさんに、何か「こう思わせてやろう」などと狙って
意図的にそう演奏しているわけではないのです。
私自身がその時のエネルギーを感じて、
導かれる方へと自然と手が動き、音が出てきているので、
「その場・その時の関係性からそうなった」というほかありません。
私は、ハッピーな方のKさんの「代役」であり
「依り代(よりしろ)」のようなものです。
その「依り代」として感じたことは、ご本人の内面を映していると捉えます。
専門的に言うと、これは
わかって使う「逆転移」の積極的な活用ということになるでしょう。
そういうわけで、Kさんは色々な音を出して
楽しげなピアノの私を阻止しようと奮闘しているのですが、
私はこの楽しいエネルギーが止まらず、走り続けました。
■自分の「1番」にOKを出す
次第に、彼女の叩く太鼓の音に力がなくなってきました。
音量が下がり、叩く間隔もまばらになって、
「あ、ダメ出しさん、やる気なくしたな。」とわかりました。
Kさんが完全に叩くのを止めたところで、私もピアノを終わりにしました。
終わって、2人で笑いました。
Kさんは「あまりにもその子が楽しそうにしているので、
やってるうちにバカバカしくなって、もう止める理由がなくなった(笑)」
とのこと。
自分の中で葛藤していた2人の力関係の本質、
どちらが自分にとって本当に力があるのかを、体感して納得されたようです。
その気持ちでお花の仕事について考えると、
Kさんにはこれまでのような恐れがなくなっていました。
今の条件でやろうと思えばできることがあることが見えてきました。
「絶対にできない。」と思っていたことが
「なんだ、やろうと思えばできるじゃない!」と思えるようになるというのは、
なんと力をもたらすことでしょうか。
それは自分のパワーを取り戻すことであり、
「本当に望むことを望んでいい」と自分にOKを出すこと。
Kさんは、今まで封印していた「1番」に
満を持して「OK!』を出すことができたのです。
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