ピアノバーと音楽療法

写真はパリのホテルPAVILLON MONCEAU のサイトからお借りしました

私のラウンジピアノ変遷

ホテルやバーにピアノが置いてあるのを見ると、たまーに「あー、弾きたいなー」と思うことがあります。

空気のように、心のままに、その場に合わせていろんな曲を流してみたい。

こういうところで演奏される音楽は、いわゆるラウンジピアノというものです。

ガシガシとアドリブかますようなマジなジャズじゃなくて

映画音楽や古いスタンダード、ポップスなどを誰にでもわかりやすくキレイな感じに弾くスタイルのことです。

私は学生のころから、レストラン、ホテル、ピアノバー、クラブなど、色々なお店でそういうピアノを弾いていました。

けっこうな年数やったのでレパートリーも多く、かなりのベテランだと思います。

 

いちばん最初は楽しかった。
なんたってピアノを弾いてお金になるのだから。

学生のアルバイトとしては上々だった。

レパートリーをどんどん増やしていくのも充実だった。

しばらくするとストレスを感じるようになった。

邪魔にならない、雰囲気作りの音楽が求められることに反発心が出てきたから。

「私はジャズがやりたいのに。もっと自分を主張したいのに。それができない!」

「所詮BGM。誰もちゃんと聴いてないじゃん。軽く扱われてる!」

と、若さゆえの「我」と半人前の変なプライドがぶつかって、心がすり切れるようになった。

もう少し大人になると、そんなに気にならなくなった。

「この場にふさわしいことをやって、いい雰囲気になればいいね。」と思うようになり、やがてそういう世界から遠ざかった。

さらに色々あって、編曲や作曲の仕事を一通りやりきった頃。

そして、音楽療法なんていう世界も知ることになった頃。

もう人生も折り返しを迎えたそんな頃、また機会があって、久しぶりにそういう場に戻ったことがあった。

すごく楽しかった。

人を見て、場を見て、その場の空気を感じた通りに、思いつくままにいろんな曲や弾き方を出し入れして、空気を作ることが楽しかった。

「すごいだろ」的にゴリゴリ自己主張するのではなく

優しく、穏やかに、シンプルに、みんなが知ってるメロディーを
みんなのイメージ通りに、

もしくはそれよりちょっと素敵に弾いて

みんなの心に響かせることに喜びを感じた。

昔はあんなに「お客はどうせ聴いてないじゃん!」と思ったけど

いやいや、けっこう聴いてるんだ、みんな。

お酒飲みながら、話しながら、でも確実に聴いてる。

そこに漂う空気や、ココ!というおいしいところを聴いてる。

「この年代のこの人だったら、コレ、当たりでしょ!」と狙った曲を弾いて、その方が反応したり、おもわず鼻歌を歌ったりすると
「やったね!」と思った。

言われたリクエストに譜面も見ずに幅広く応えられるのが誇らしかった。

そうやって皆が喜んで、お酒の席が盛り上がるのは悪い気はしなかった。

 

あれからさらに年を重ねて、

もうずいぶんそういうことはやっていないけれど、

あの楽しさを思い出すと、時々「またああいうの、弾きたいなー」と思います。

そういうピアノが必要な方、呼んでくれたら行きますよ〜(^o^)

楽療法とピアノバー

実はね、こんなこと思ってるのは私だけかもしれないけれど

現在の日本で主流の、高齢者施設での音楽療法は、本質的には、そういう世界と通じるものがあると私は感じています。

「一緒にするなーっ!」てマジメな方、まあ怒らないで。

そりゃね、介護施設とお酒飲む場所とは、形も目的も違いますし
認知症の方と元気な方では対応が違うのも承知。

でも、私にとっては、そこでの音楽の基本姿勢って、どうも似てると感じるんですよね。

みんなの知ってる曲を、みんなのイメージ通りに。

その人の喜ぶ曲を、その人がうれしいように。

キレイに、楽しく、わかりやすく、心にグっとしみるように。

施設では、お年寄りが好きな曲をそんなふうに演奏し、皆で歌います。

ピアノバーやラウンジでは、おじさん達やオトナのカップルのために
そんなふうに演奏します。

つまり、ミュージシャンの「我」が必要なところじゃないってことです。

そんなに違うもんじゃない。

そして私は、そういう演奏をしている時が楽しいかも。

「私を見て!私の音を聴いて!私が私が(我)!」という演奏よりも。

「ハイみなさん、集中してこの音を聴いて〜〜っ」という場よりも。

その場の空気を感じたままに、
その人の気持ちをくみ上げ、
その場の空気に入っていくような。

たまたま私を通して出てくる音楽によって、その人が、その人自身の心につながるのが、いちばんうれしい。

これからの音楽療法はビートルズ世代

これまでの高齢者向けのレパートリーといえば、世代的に唱歌や昭和歌謡かもしれないけど

これからの高齢者、特に都市部では、スタンダードジャズやオールディーズ、ビートルズなんかはあたりまえになってくるでしょうね。

グループサウンズ、フォーク世代の、ギター弾くおじいちゃんだって、もうちょっとすれば増えてくるでしょう。

施設でも、みんなにどんどん楽器やってもらってもいいんじゃないでしょうかね。

かつてピアノバーやラウンジで繰り広げられた世界が、高齢者施設でもできるようになったら、すごく楽しくなりそうだなー。

そしたら、私の出番ですね ♪ まかしてください (^-^)v

そういう曲を弾く必要に迫られた音楽療法士の皆さんにも、レッスン提供できますしねー

ていうか、逆もあり。

もともとそういう仕事をしているミュージシャンの皆さんにも。音楽療法の世界にもっと入ってきてもらえばいいんだと、私は思うんです。

もともとプロレベルで音楽のできる人が、音楽療法的なフレームワークを学んで、セラピスト的な在り方を学んで・・・ってありでしょう。

そっちから入ってきた方がある意味早いかも。

そのへん、もっとボーダレスになってもいいんじゃないでしょうかね。

そういう ミュージシャン⇆セラピスト をつなぐ教育だって、私はできるスタンスにいると思っています。

これからの高齢化社会に向けて、音楽を活用する新しいアイディアはまだまだたくさん浮かんできてちょっとワクワクしますねー♪

 


この記事を書いた人

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大塚 あやこ

心理カウンセラー/講師/音楽家
一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社代表取締役
 
東京芸大作曲科卒。演奏家・作編曲家として20年間第一線で活動後、燃え尽き体験をきっかけに人生の転機を経て心理カウンセラーに転身。
悩みの根本原因に素早くアクセスする独自メソッド「ビリーフリセット®」を確立。個人相談から企業研修まで幅広く展開し、協会認定カウンセラーを多数輩出。Udemyオンライン講座「はじめての傾聴」は2万名超の受講者を誇る常時ベストセラー。 心の構造を論理的にモデル化する独自アプローチが、ビジネスパーソンから高い支持を得ている。

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