イースタインというピアノ

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イースタイン(EASTEIN)というピアノがあるのを知っていますか?

いまではほとんど知る人もいない、しかし一部マニアックに支持を集めている、れっきとした日本製のピアノです。

終戦間もない1948年、元軍人であった松尾新一の「これからは文化を創るんだ」との願いの元に宇都宮に創業。

以降1960年代のピアノの大需要期にも、昔ながらの手作業を大事にした良質なピアノ作りで評価を得ながらも、後に経営者交代による乱脈経営の果てに倒産。その後職人達による自主生産という形でがんばったものの力尽き1990年に廃業しました。

その物語は 響愁のピアノ―イースタインに魅せられて/早川茂樹・著/随想舎」に詳しく描かれています。

 

ヤマハ、カワイなどとはまたひと味違った個性を持ったピアノとして、なかなかいいらしい・・・という情報を、なんとなく知っていた程度の私。

実は今年引っ越しするにあたって、住宅事情によりそれまで使っていたグランドピアノを実家に預けて、新たに中古のアップライトピアノを探すことになり、縁あってそのイースタインが我が家に来ることになりました。

お世話になっている調律師さんに連れて行って頂いた、中古ピアノの卸元の倉庫。

広大なフロアに無数のピアノが並んでいるその中で、これはと思えたのは、カワイの一台と、そのイースタインでした。

カワイの方は状態も良く、しっかりした音がするたいへん真っ当なピアノで、まず間違いはないと思える楽器でした。

しかし気になるイースタイン・・・。かなり年代も古いので、決して状態保証とは言えないモノ。

とはいえ、黄ばんだ象牙鍵盤を触って音を出してみると、素性のいい音と、なんともいえない味わいがあり、理屈抜きに惹かれてしまったのです。

何かと、普通とちょっと違うモノが好きな私なので、ここはリスク高めでも面白みのあるこっち!と決断して、我が家に来たのがこの イースタインB型 です。

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B型は、ヨーロッパのピアノ「ブリュートナー」をお手本に作られたということで「B」と名付けられたそう。

外見的には上部の「肩」部分の板が丸くシェイプされているのと、足がクネンと控えめに猫足になっているところがユニーク。

内部的には、私は専門的なことはあまりわからないのですが、鉄骨をくりぬいた部分に真鍮板をはめ込みチューニングピンを埋め込む、という特殊な構造が「ブリュートナー式」なのだそうです。

その辺はこちらの記事に写真等出ていますので参考までに。

 

さて、イースタインのピアノは、製造番号から作られた年月がすぐわかる仕組みになっています。

これは「響愁のピアノ―イースタインに魅せられて」に書いてあるので抜粋します。

 

まず製造月をローマ字で示す。1月はJANUARYの頭文字を取ってJ、後はJに続くアルファベット順で2月はK、3月はL・・・という具合。11月はTだが、12月はUを飛ばしてVになる。U型という機種があるためだ。

続いて西暦の下二桁で製造年、さらに製造日を二桁の数字で表す。最後に同じ日に作られたピアノを価格の高い順に並べ、1から順に数字をふっていく。

例えばM64131なら、1964年4月13日に作られた一番価格の高い機種(〜中略〜)ということになる。

 

それを読んで、ウチのピアノがいつ作られたのか調べてみました。

1973年6月製造。

イースタイン社の歴史の中で、この年は新たな経営者により体制が変化して無理な量産を強いられ、ピント外れの社長に振り回されて会社の中のバタバタもピークに達しつつある頃。翌年には不渡り〜差し押さえという事態に陥ることになります。

ひや〜、そんな時に作られたピアノだったんだねー。

いったい職人の皆のどんな思いが、この楽器に注がれていたんだろう。

量産量産のかけ声に焦っていたのか。

疲れ果てて「やれやれ・・」だったのか。

経営側への不信や不満だったのか。

それとも「こんな状況だけど精一杯いい楽器作るぞ!」だったのか。

知る由もないそんなことを思ってみる・・・。

 

さて、我が家に来た楽器は調律師さんによると、弦やハンマー等、内部すべて出荷当時オリジナルのままだそうです。

タッチ感・アクション感はアップライトにしてはなかなか良く、全体に音色は透明で明るく、ずいぶん響く印象。低音部の迫力もアップライト離れしてゴーンと鳴ります。

ただ、さすがにすべて当時のままということで弾き込まれ方も相当なもので、ハンマーはかなり固くなってちょっと音がイタイ。弦ももういいかげん替えた方が良いという状態みたいです。

基本的な素性は気に入っているので、いつか弦とハンマーを取り替えて大々的にオーバーホールしたいなー、というのが次の夢。

いずれにしろ珍しいものなので、もしネットで情報を探している方がいたら少しでもお役に立てればと思い、長くなりましたが色々と書いてみました。

ちょっとドラマのある古いモノ、細々と、大事にしていきたいです。

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その後追記
イースタインを修理しました。
2011年12月10日の記事「ピアノの大修理」 

 


この記事を書いた人

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大塚 あやこ

心理コンサルタント/講師/音楽家
一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社代表取締役
 
東京芸術大学作曲科卒業後、アーティストのツアーサポートや編曲、アニメやドラマのサントラ作曲等を手がけ約20年活動。
音楽での燃え尽き体験をきっかけに、心理カウンセラーへ転身。
非合理な思い込みを外して本来の力を解放するオリジナルメソッド「ビリーフリセット®」を提唱し、人生の転機に直面した人を新しいステージへと導く個人セッションや講座を開催。「ビリーフリセットで人生が変わった!」という人多数。
カウンセラー養成講座も開催し門下の認定カウンセラーを多数輩出している。
現在はカウンセラー養成の枠を超えて「リーダーズ講座」として長期講座を開催。経営者やリーダー層からの信頼を得て、企業研修にも発展。企業向けオンライン講座「Udemyビジネス」で「はじめての傾聴」動画講座が登録者1万8千名を超えるベストセラーとなっている。

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