元気ソングやキレイ曲だけが癒しじゃない

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前回、人が音楽を必要とする理由の一つとして、
なかなか感じられない自分の本当の感情を
音楽を通して感じるためではないか・・・という考察をしてみました。
前回の記事「人が音楽を必要とする理由」

さて、今日はもう少し具体的な話にしましょう。

■暗い歌は、暗い心を癒すはたらきがある
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♪ なにか〜ら、なに〜まーで、まーっ暗〜闇よォ〜♪

という歌、知ってますか?
鶴田浩二・「傷だらけの人生」です。 →YouTube動画はこちら

暗い歌です。
「時代についていけない。人生うまくいかない。俺なんざ日陰者だ。」
と感じている男性の嘆き歌です。

♪ 右を向いて〜も 左を見てぇ〜も〜
ばかと阿呆〜の からみーあ〜〜い〜♪

おもいっきり人のせいにしてますね。
どうしてもそう見えてしまうんですよね。

♪どーこ〜に、男のォ 夢がある〜♪

この方は「今の世の中に、夢なんかない」と感じてるんですね。
「男の」なんて一般化してるけど、ほんとは「俺の」ですね。

♪  嫌だ嫌です お天道様よ
 日陰育ちの 泣きどころ
 明るすぎます 俺らには ♪

小さい頃から苦労が多かった方なんですね。
いろいろ理不尽なめにもあって
「こんな自分はどうせ・・・」と自己肯定感を持てずに
苦しい思いをして人生ここまでやってこられたんでしょうね。

こんな暗い歌だけれど、
かつて昭和の時代、これを聴いて
「そうだ、そうだよなぁっ。ああ、俺も一緒だ、わかってくれるか・・・」
と涙した男性たちも多かったはずです。

さて、もうひとつ別の歌。

♪十五、十六、十七と〜
 あたしの人生、暗か〜った ♪

藤 圭子・夢は夜ひらく →YouTube音源はこちら

こちらはその女性版、といったところ。
この歌の主人公の方も、かなり自己否定の強い方です。
「世の中にきれいな花はいっぱいあるけど、
 自分は咲けない。咲き方がわからない。」と言っているのです。

そういう歌詞を、おもいっきり暗いメロディーと伴奏に乗せて
むせび泣くように歌う。

こういう歌に響いて「ああ、私のことだ」と感じたり、
ひっそり涙した女性たちも、
昭和の当時、きっと多かったのかもしれません。

音楽の持つ感情に心が響くのは、元々心にそういう感情があるから。
そして、音楽を通してそれを自分の感情として感じ、
カタルシス(解放・浄化)を得る。

そのような、前回の仮説を元にすれば、こういう暗い歌も
人の持つ心の暗い部分・痛みの感情にアクセスしていって、
そこに響き、解放・浄化していく役割があったということになります。

つまり、
暗い歌は、暗い心を癒すはたらきも持っているということです。

■元気、キレイだけでほんとに癒されてる?
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こういう歌を聴くと、なんだか「今じゃ考えられない」と感じます。
だって、今、ここまで暗い歌って世の中にでてます?

おそらく世の中に出る前に
「こんな暗い歌売れない!」って却下されてるんじゃないだろうか、
と思います。

なぜなら、世の中はどうも
元気、勇気、希望、夢、絆、愛、友情、光、
がんばる、やれる、一人じゃないよ、負けないで、明日が、未来が

みたいな歌が圧倒的に多いような気がするから。
「カラオケで盛り上がる歌」が前提になっている面もあります。

確かにみんな、
元気になりたくて、希望を持ちたくて、やる気になりたくて
音楽を聴くのかもしれない。

元気な曲を聴けば元気になるんじゃないか、
キレイな曲を聴けば癒されるんじゃないか、
明るい曲を聴けば、暗い気持ちが晴れるんじゃないか、
って、思うのかもしれません。

でも、それ、ほんとに本当ですか?

私はふと疑問に思うことがあります。

それで元気になってるのかなあ。
希望が持ててるのかなあ。
癒されてるのかなあ。
暗い気持ちは晴れてるのかなあ。
曲が終わっても、それ、持続してるのかなあ。

ちょっと考えちゃうんですよね。

もちろん、それで元気になれれば何よりなんだけれども、
ほんとに、全部が全部
それで片付いてるわけじゃないんじゃないか・・・・

だって、もしも
ホントは感じている暗い気持ちや辛い気持ちを、
元気な曲やキレイな曲で上塗りしてるだけだったら、

それ、癒しじゃなくて
「気晴らし」とか「気休め」じゃない?

ポジティブは、100%善!ではなく、
時に毒になると、私は思っています。

希望が持てないような気持ちや、やるせない思いを
感じないように押し殺しといて、
「いかんいかん、希望を持たなくっちゃ!ポジティブに!」って
希望!希望!とガンガン自分を煽るんだったら

ますます本当の感情は仮死状態になって、腐っていくよ?
本当の自分はどんどん埋もれていくよ?

それ、「ゴマカシ」や「麻痺」じゃない?
それじゃ、癒しになってなくない?

気晴らしとか、気休めとか、
ゴマカシとか、麻痺とか、

音楽ってその程度のものなんですか。
そんなもんなんですか、音楽って。

もちろん、そういう音楽があったっていいけど、
時にはそういうものに頼ってやりすごしたっていいけど、

私自身はしたくないな、そういう音楽の使い方。

■「癒し」とは元気、キレイだけじゃない
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「癒し」という言葉はずいぶん手垢がついてしまって
私はあまり気軽に使いたくはないのですが、

私は、癒しというものを次のように解釈しています。

・自分の本当の感情に触れること
・自分の中の真実に気づくこと
・ありのままの自分に戻ること

だから時には、
自分の中の悲しみや痛み、やるせなさやドロドロしたものにも
触れることになります。

実際それがあるんだったら、まずそれが真実だから。

そこをちゃんと感じてあげて、涙してあげて、
つらいねー、しんどいねー、と自分でわかってあげることが
癒しの第一歩です。
自分の本当の感情に触れるとはそういうことです。

そうやって感じてあげたら、自然に
「ああ、ほんとは自分はこうしたかった。こう生きたかった。」
と自分の中の真実に気がつくようになります。
「もう少しこうしてみよう。」という知恵も湧いてきます。

元気だ!希望だ!いわなくたって
自然と元気も希望もわいてきます。

そして、「色々あるけど、この自分でいい」って思えたら
それが何よりの癒しです。
そういう心に、光がさしてくるんです。

私はそう考えています。

だからこそ、その最初の段階である
本当の感情に触れること、というのはとても大事なことだと思うし
そこに響くような音楽の必要性をとても感じるのです。

■だから、暗い曲、悲しい曲も必要
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そこで冒頭の話。

♪ なにか〜ら、なに〜まーで、まーっ暗〜闇よォ〜♪

だって、いいじゃないですか。
そういう曲、あってもいい。
一緒に泣いたっていい。

暗い気持ちに、暗い音楽が響く。
いいんですよ、それで。

こんな暗い歌に響いていたのは、
昭和の昔の人だけなのでしょうか?
昔の人はそんなに辛い人が多かったのでしょうか?

いや、そんなことないですよね。
今には今の、苦しさ、辛さ、やるせなさ、しんどさや怒りを
みんなが抱えています。
それでありながら、それをないことにして、抑えて隠して
がんばって生きています。

だからこそ、
ちゃんと自覚できなかった、押し込めていた
辛いよー、しんどいよー、かなしいよー、という気持ちに
ちゃんとアクセスして、響いて、
解放・浄化してくれるような音楽が必要、と私は思います。

だから、結論。

癒されたい時、元気になりたい時。
反射的に元気ソングやキレイ曲に流れないで、
たまにはあえて、
悲しい曲、暗い曲にどっぷり浸ってみるのはどうでしょう。
自分の本当の気持ちに響く音楽は何だろうって、探してみましょう。

「こんな暗い曲を聴く自分は暗い人間だ、変人だ、もうダメだあ〜」
とか、自分を責めないであげて。

光だけの人間なんていないんですから。

それは、自分の真実に触れてあげる、
とても自分にやさしい時間になるはずです。

そんな時間に寄り添ってくれる、ぴったりな音楽に
出会えるといいですね。

もちろん、演歌や歌謡曲でなくていいんです。
別に鶴田浩二をおすすめしてるわけじゃなくて(笑)。
いろんなジャンルに、そういう音楽があるはずです。

ちなみに、ジャズの中で私が好きな「悲しい音楽」の
おすすめ記事を以前書いたのでご参考までに。

過去記事→悲しい時はときには悲しい音楽 


この記事を書いた人

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大塚 あやこ

心理カウンセラー/講師/音楽家
一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社代表取締役
 
東京芸大作曲科卒。演奏家・作編曲家として20年間第一線で活動後、燃え尽き体験をきっかけに人生の転機を経て心理カウンセラーに転身。
悩みの根本原因に素早くアクセスする独自メソッド「ビリーフリセット®」を確立。個人相談から企業研修まで幅広く展開し、協会認定カウンセラーを多数輩出。Udemyオンライン講座「はじめての傾聴」は2万名超の受講者を誇る常時ベストセラー。 心の構造を論理的にモデル化する独自アプローチが、ビジネスパーソンから高い支持を得ている。

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