本当はちょっと怖い音楽

 

音楽はいとも簡単に気分を左右する。

音楽の持つ気分に影響されて、多くの人は音楽を聴いて元気になったりリラックスしたりするのだけれど、

音楽そのものの持つ気分と自分自身の気分という2つを、無自覚に混同し同一化することにはリスクもあることをわかっていた方がいいかもしれないと思う。

音楽の使い方

音楽はいとも簡単に気分を左右するから、それをわかっている人間は、意図的に音楽で人の気分を誘導する。

どういう和音やリズムや音色等を使えば、人をどんな気分にさせる可能性があるか、プロはわかっているのだ。

映画やドラマのいわゆる「劇伴」はまさにそういうことだし、店舗のBGM、その他音声を伴うあらゆるメディアで当たり前に行われていることだ。

 

さらにはそれが政治的目的や戦意高揚で使われることも、これまでの時代の中で多々あった。

悲惨な戦地に赴くために勇ましい音楽で気分を高揚へと誘導することもできる。

あるいは音楽で感情を動かして意図的なセールスや信心に誘導することもできる。

音楽は、本当に感じていることを覆い隠し、歪曲し、別の気分へとすり替える力も持っているということだ。

そうやって意外と簡単に、人は音によって誘導・操作されていると考えてみるのはどうか。

その問題の根本は、音楽の持つ気分をいとも簡単に自分の気分としてしまう、無自覚さにあると思う。

自分ではないものに左右されているのに、それに気がついていないこと。音楽は意外と怖いものなのだ。

音楽と自分の区別をつける

音楽によって誘導・操作される危険から遠ざかるためには、まず音楽の気分を受け取ったら「これはこの音楽が持っている気分である」と冷静に認識すること。

例えば、今かかっている音楽が勇ましいとする。

勇ましいのは音楽であって、自分の気分まで勇ましくなる必要はない。

自分は今ここで落ち着いた気分だ。

それならば、その落ち着いた気分で「ああ、勇ましい音楽だなあ」と感じていること。

音楽の気分と自分の気分の違いとに気がついていること。

音楽の気分に取り込まれないこと。

 

そんな距離感で音楽に接することができるようになるとどうなるのか。

そのメリットは、他者の意図に操作されにくくなること。

ぶっちゃけダマされにくくなること。

本当はどうなの?という見方・感じ方が育ってくること。

自分ならではの感覚・感性が伸びてくること。

自分の気分に自覚的になり、責任を持つことができるようになること。

そうすると、ひいては色々な出来事に対しても、あっさり動揺したり感情的になったりすることが減ってくるであろうこと。

 

デメリットは、音楽に感動しづらくなること。

集団的な高揚の波に乗れなくなること。

音楽が時と場を選んで自分自身の意思によって聴取され、それがよい方に転ずれば「気分転換」というものになるだろう。

しかしネガティブな方に転ずれば「音楽依存」というものにもなる。

音楽がないと気分が落ち着かない、気分の調整をいつも音楽に頼っている、静けさが怖い、等。

そこには
「素のままの自分の気分は手のつけようがない」

「自分自身の生(なま)の気分を感じたくない」

「感じるのが怖い・・・」

というもっと深刻な自己疎外の問題が潜んでいるような気がする。

そのことについてはここでは深く語らないけれども。

 

音楽は、人を楽しませたり、励ましたり、癒したりもする。

しかし、人を騙したり、ごまかしたり、現実から目を背けさせたりもする。

そこをわかって用いることができればいちばんいい。

音楽好きの人には冷水を浴びせるようなことを言って申し訳ないけれども、

音楽をちょっと裏から見たそんな怖さを、語ってみたくなった。

 

 


この記事を書いた人

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大塚 あやこ

心理カウンセラー/講師/音楽家
一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社代表取締役
 
東京芸大作曲科卒。演奏家・作編曲家として20年間第一線で活動後、燃え尽き体験をきっかけに人生の転機を経て心理カウンセラーに転身。
悩みの根本原因に素早くアクセスする独自メソッド「ビリーフリセット®」を確立。個人相談から企業研修まで幅広く展開し、協会認定カウンセラーを多数輩出。Udemyオンライン講座「はじめての傾聴」は2万名超の受講者を誇る常時ベストセラー。 心の構造を論理的にモデル化する独自アプローチが、ビジネスパーソンから高い支持を得ている。

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