ポップスの作曲やってる初級〜中級者の方向けトピックです。
おしゃれな曲にしたい!と望むあなたのためのコード術、プチ知識。
フワッと逃げるドミナント
さて、前回ドミナントの話の続きです。
前回はこちら
ドミナントコード、つまりⅤ7、
CのキーでいうとG7(ソシレファ)。
このコードの特徴は、次に Ⅰ (主和音)であるC(ドミソ)に向かって強烈に行きたがる性質を持つことです。
なぜなら、構成音の中にシとファが含まれていて、この2つはそれぞれ
シ → ド
ファ → ミ
というふうに、ドミソの構成音に向かって転がる推進力を持っているからです。
ということは、Cコードへと向かうエンジンを二機備えたも同然。
それだけパワフルであると同時に、ある直接的なキツさを感じさせるサウンドでもあります。
さて、おしゃれな曲にしたい場合、この「純ドミナント」といってもよい、G7という音が
その直接的な性質ゆえに、キツさ、露骨さ、とか
なんというか・・・あまりにも赤裸々、あるいは濃すぎるかんじ、という印象をもたらすことがあります。
このG7(ソシレファ)のエンジンであるところの
特に「導音(どうおん=主音へと転がる音)」といわれる「シ」の音が、そのキツさ、露骨さのカギであるともいえるのです。
言葉にもありますよね、
ストレートにズバッと言うのがいい場合と、
ソフトな婉曲表現の方がいい場合と。
それに似て、ちょっとシャレこんだ音楽にしたい時に、このG7のドミナントくささ、キツさ、露骨さが「なんかダサイ」と感じる場合があります。
じゃあ、どうするのか。
実は、ドミナントコードにも婉曲表現があります。
キツさの元凶である「シ」を外すのです。
それが、Dm7/G(ジーぶんのディーマイナーセブン)。
簡単に言うと、ピアノの左手でソの音を単音で鳴らし、右手でDm7(レファラド)を弾けばOKです。
試しにやってみましょう。
左手「ソ」
右手「レファソシ」
まずはこれ、G7。
そこからCのコードにいってみてください。
左手「ド」
右手「ミソド」
チャンチャン!とめでたく終わるかんじです。
次に
左手「ソ」
右手「レファラド」。
これDm7/G。
そこからCのコードにいってみてください。
左手「ド」
右手「ミソド」
印象違うの、わかりますね?
G7のドミナントくささが、Dm7に替えることによってフワッと和らいでいます。
それでありながら、ベース(左手)はGなので、しっかりとドミナントの機能を持っています。
実はこういう使い方、ポップスではゴマンと出てきます。
けっこう皆なにげなく、露骨なG7を避けてフワッと逃げるということをやってます。
同じような使い方として、G7sus4(サスフォー)に替えるやり方もあります。
ほしいサウンドと、すでにあるメロディーとの兼ね合いで、どれがふさわしいのか。最適なのか。
これも選択です。
コード使いは色使いに似ている
このように、コードとテンションというのは、どんな音楽性で、どんな表現をしたいのか、その目的によって色々な選択肢が存在します。
それはまるで、たくさん色のクレヨンを揃えるようなものだと思います。
6色くらいの基本セットで描ける絵と、微妙な中間色まで揃った何十色のセットで描ける絵は違うはずですね。
いろいろな色を自分の引き出しの中から出せるようになると、作曲やアレンジをする上で、たいへん幅が広がります。
もちろん、なんでもかんでもテンションを入れればいいわけではなく、
ストレートな曲はストレートに3和音であることに意味があります。
そして、ソウルやR&Bテイスト、ボサノバやジャズ・フュージョンテイストにもっていきたいのだったら、絶対に使うべきテンション・コードがあります。
最終的にやりたい音楽によって、どのように色(コードとテンション)の混ぜ具合を配分するか。
それを考えていくのも、作曲や編曲の醍醐味といえるでしょう。
そういうわけで、ここ数回、ちょっと専門的な話が続きましたが、ひとまずこれで、このシリーズは終わりにします。
小難しいことにおつきあいくださってありがとうございましたー ♪
☆旧ブログ「大人の音楽レッスン」より
2013年11月に書いた記事を加筆修正しました。