冬枯れの木の中に
寒さがめっきり厳しくなりました。
ほとんどの木は葉を落として、枯れ木になっています。
冬枯れの木というのは、独特の静けさを感じます。
見た目は本当に枯れてしまったかのよう。
でも、その内側では、いのちは確かに灯っていて
春になると芽を出し、花を咲かせます。
今、枯れているように見える木の中に、
伸びるべき葉が秘められている。
咲かせるべき花や、なるべき実が、すでに秘められている。
肉体の目では、枯れ木を見ながら
心の目で、その奥に
伸びる葉、咲く花、成る実を見ることができるか。
このまなざしは
カウンセラーにとっても大事なものです。
つまり、目の前のクライアントさんが
たとえ今
こんなに混乱していて
こんなにとらわれていて
こんなに不自由で
こんなに表情がなくて
こんなに諦めていて
こんなに怯えていて
こんなに人のことばかり責めていて・・・
などといった状態で、そこにいたとしても
その人のことを
「そういう人だ」「それがすべてだ」
と思わないこと。
たとえ今は、見るべき緑も、花も、実も、
表に現れていなかったとしても
でもきっとこの方の中には、この方ならではの
秘められた緑と、花と、実が、きっとあるはず。
そう信じるまなざしでいられるか、ということ。
それがあるのかどうかというのは
カウンセリングの結果にも
見えないところでかなり大きな影響を与えていると
私は思います。
枯れ木の中に、秘められた花を思うまなざし。
カッコよくいうとそんなかんじ。
正直言って私も、時には
クライアントさんを前にして
「うわあ、この方、私の手に負えるかな〜、どうすりゃいいんだ!?」
と思うこともあります。
くじけそうになった時、
それでも!
この方の中にもきっと、咲くべきいのちがあるはず!
と思い直すようにしています。
それを心の目で見るように。
それをなんとか探して
どうにかしてみつけることができるように。
そんな思いを杖に、
見えない道のりを、一緒にたどっています。
そして春が来る
そうやって関わりながら
少しずつ歩みを重ねるうちに、
硬かった樹皮から一粒の芽が顔を出すような・・・
ともいうべき瞬間に出会うことがあります。
それは私にとっても本当に嬉しい瞬間です。
その一つは、
ご本人が長年縛られていた思い込みに
自分で「これが思い込みか!」と気づかれて
「あー!!」となる時。
思い込みというのは、思い込みと気づかずに
「事実だ、真実だ、そういうものだ」と思い込んで
何の疑問も持たずに従ってしまっていることをいいます。
そしてその状態が当たり前になっていて
当たり前に苦しい、しんどい。
その「当たり前」以外を知らないから、いつまでもしんどい。
多くの方がそういう状況でカウンセリングに来られます。
だからまず最初の段階で
「それが思い込みだったのだ」と気づくというのは
それだけですごい次元の飛躍なのです。
これには「自分の姿を第三者として見る」という
視点の転換が必要です。
しかもそれは
「第三者として見よう」という心がけだけでは難しくて
ある意味
なんか知らんけどそれが「起こる」という
恩恵の瞬間ともいうべきものが訪れた時に
起こるのです。
カウンセリングのセッションとは
それが起こりやすくなるプロセスを意図的に作り出し
クライアントさんもカウンセラーも
共に流れに乗れるよう舵取りをしていくようなものです。
そして、その「あー!!」という気づきの瞬間が起こった時
その方の存在の次元がほんとに変わります。
とらわれて、こだわって、人に怯えて、自分を責めて・・・
とやるしかなかった
さっきまでの「その人」が突然
非常にスッキリ、かつパワフルな
まるで菩薩のような「智慧者」に
その瞬間なるのです。
そして心から笑顔があふれて
「あー!そうだったんだ!なんだ!そうかー!アハハハ!」
となります。
本来のその人の輝きや魅力というのが
空気のようにあふれます。
その時こそまさに
枯れ木から芽が出た瞬間、
花がほころんだ瞬間 のようです。
いつのまにか季節が変わっている
セッションを重ねる中でクライアントさんは
そんな瞬間を何度も体験しながら、
それまで「当たり前」だった場所から
知らないうちに違う場所へと
足場を移しているものです。
気がついたら季節はもう変わっていて
いつのまにか葉っぱがあるのが当たり前になって
いずれどんな実がなっていくのかも
なんとなく見えてくる・・・
そんなふうになったら、だいたいセッションは卒業です。
そのような瞬間に立ち会い
プロセスをご一緒していくのは
カウンセラーやセラピストという仕事の
この上ない醍醐味ではないかと思います。
冬枯れの木の中にも
たしかに、静かに
いのちが息づいています。
今は冬でも、きっと時期が来れば
芽吹く芽も、咲く花もあります。
人に、自分に、それを信じて。
この季節を過ごしていきたいですね。