2年前の引っ越しと共に、わが家にやってきたアップライトピアノ
「イースタイン」。
その経緯とこのピアノの詳細については
以前に書いた下記のエントリーを参照ください。
イースタインというピアノ 2010.11.7
さて、古いもの好き・珍しもの好きとその時のカンで
購入を決めたこの1973年製のピアノなのですが
弾いているうちにどうしても音色に満足いかなくなってきました。
ともかくハンマーが固い。異常に固すぎる。
その結果キンキンと薄っぺらい音で、うるさいやら疲れるやら。
せっかく素性はいいピアノのはずなんです。
一度ちゃんと専門家の方に見てもらって、
直るものなら直したいと思いました。
そこでネットを探して、ピン!ときたのが 砂田ピアノさんです。
砂田さんは「寡黙で頑固な職人肌」みたいな
一般的な調律師さんのイメージとは違って
意外な音楽歴も持つ、情熱的で華のあるイメージのお兄さまでした。
まずは通常調律をお願いして見て頂いたところ、
現状で問題あるところはこれとこれで、その原因はこれで、
こういうところをこういう風にすると、こう変わってこうなる・・・と
丁寧にたいへん納得のいく説明をして下さいました。
ピアノの中味というのは、複雑で精密な機械構造の集まりです。
弾いている本人も、どういう仕組みで音が出てるのか
知らなかったりします。
砂田さんによれば、このハンマーには硬化剤という薬品が
過剰に使われていてまずはそれを抜く必要があること。
その他もタッチのバラツキ、鍵盤のバラツキ、
それの原因となる内部構造のガタツキ、等々
色々な要因を直してやっと、音色調整という作業に至ること・・・
具体的な詳しいことは私もよく理解しきれてませんが (^ ^;;
ともかく私の希望する状態にまで持っていくのであれば
ハンマー周辺のアクション部分を丸ごと作業場に持ち帰り
所要1ヶ月強という大修理コースになるということがわかりました。
期間もかかるけど、もちろんお金もかかる。しばらく考えたけれど
やっぱり嫌な音のピアノを弾くのはこの先耐えられないのと、それ以上に
このピアノの本来の良さがちゃんと出ればどれだけいいだろう・・・
という希望を捨てられないのとで、やるぞ!と決断して10月初旬、
ピアノの中味のアクション部分だけがゴソッと取り出され
約1ヶ月の入院となりました。
その間、88鍵分のハンマーに染み込んだ、年代物の「硬化剤」を
時間をかけて抜くんだそうです。「ヤク抜き」ですな。
そしてその結果、ハンマーは良い具合に柔らかく変貌を遂げ、
良い音が期待できそうとのご連絡を頂きました。
その他各所の細かい作業を全部終えて、わが家に戻ってきたのが11月中旬。
これはアクション部分を取り外して作業中の状態
アクション部分が戻ってきた状態
一番上に歯のように白く並ぶのがハンマーです。
さて、中味が戻ってくればそれで終わりではないんですね。
ここからが本格的な調整の始まり。
戻ってきた当日。その2週間後。そのまた2週間後。
それぞれ長時間の作業が入り、
ここでは書けない秘伝のあんなコトやこんなコト・・・
スペシャルなケアが山盛りです。
そしてついに12月中旬、ひとまず工程終了ということで完成しました。
作業途中でも、明らかに音が違っているのがわかりましたが、
できあがってみると、やっぱり当初とは全然違います。
キンキン、ペラペラの中高域が、コロっと輝く丸い音に。
ビョンビョンいってた低域が、ズゴーンと深い低音に。
弱い音は優しく切なく、強い音はキッパリと輝かしく。
それって当たり前じゃん、て?
いやいや、そんな当たり前なことが、
意外とそこらのアップライトでは出ないんですよ。
楽器の元々の素質と、その後の調整が大きくモノをいうんです。
さらに鍵盤のタッチもしっかりと高級感あふれる感触に揃って、
アップライトとしてはかなりのレベルの楽器に
変貌したんじゃないでしょうか。
もう少し色々弾いてみると、さらに語るべき言葉が出てくるかも。
しかし、難しいことはさておき、結局私が楽器に求めるもの。それは
弾く気がする、弾いて楽しい、
いつまでも弾いていたいと思う、か。
それが私のいちばん欲しかったこと。
おそらくそういうピアノになってきたと思うので、
これからさらに時間をかけて、その音を味わっていきたいと思います。
単なる調律に留まらないこういうことをご相談・お願いするのには
誰でもいいというわけにはいきません。
幸い、信頼できる方に巡り会う事ができてよかったと思いますし、
それをカンで嗅ぎ分けて見つけた自分にもオッケー!
砂田さん、お世話になりました。